
人材育成を考えるとき、マーケティング的な思考が絶対に必要だと思うのです。
製品開発現場でのエンジニア育成、コンサルタントとしての人材育成を考えると、少なくとも1,000人以上の技術者育成に携わってきました。
その経験から、人材育成とマーケティング思考は切っても切れないと確信しています。
人材育成にマーケティング思考が必須である理由
企業にとって人材は、会社の業績向上に貢献してもらうためのいわゆる武器になるものです。
将来、会社へ利益を還元してもらうために投資をして育ってもらうということです。
本人の立場で考えてみると、育成してもらってももらわなくても、その先にあるのは競争です。
出世競争と言ってしまうと世知辛いですが、企業内での競争に限らず、世の中から認められてたくさんの収入を得る、人から認知されることで大きな仕事を獲得できるようになっていくことを目指しているというのが本人の立場になります。
つまり”選ばれる”ということです。
このように本人の立場で考えると、人材育成はマーケティングそのものだと言えると思います。
以下は、詳細を説明していきます。
人材を選ぶのはお客様、そして人材は商品
必要な人材を選ぶということは、選ぶ人にとって必要だからですね。
採用も、必要だから新たに人を雇うのですが、企業に貢献できる人材かどうかを見極めて採用するかどうかを決めます。
応募する人から見ると、採用しようとする企業は顧客となるわけです。
上司が昇格者を選ぶのも、選ばれた人が今以上の責任を果たしてくれるかどうかを見極めて、何人かの候補者の中から選ぶということです。
昇格対象者からすると、上司はお客様ということです。
そして、逆に考えると、企業活動の中で”人”は商品のようなものということです。
会社の中だけでなく、例えば、士業、コンサルタント、先生業などは個人のスキルでお客様から選ばれないと、仕事を得ることができません。
まさに、個人そのものが商品ということで、お客様は数ある同業者の中から、仕事の質、人間性、相性や価格などを総合的に判断します。
人材育成を考えるときに、その目的は企業にとっては将来の貢献を期待することになりますが、育成される個人としては、この先、人から選ばれるようになるかどうか、つまり商品としての価値に磨きをかけるために育成の機会を活用したり、自己啓発したりするわけです。
これが人材育成にマーケティング思考が必須な理由の一番目になります。
そして、自身を育成して選ばれるために最も大事なことは、顧客起点ということになります。
選ばれるためのSTPマーケティング
人が自分を伸ばそうと考えるとき、自分の得意分野を伸ばすことと苦手分野をそれなりに出来るようにすることの2つの道を考えます。
どちらも必要なことではありますが、”選ばれる”ということを考えると、お客さんはまず得意分野を優先的に見ます。
なので、選ばれるために人がアピールするのは、得意分野ということになります。
この得意分野を選ぶときには、専門分野を細分化(セグメンテーション)して、細分化された領域のうち、自分がどこのエリアを狙うかを決め(ターゲティング)ます。
そして狙いをつけたエリアに対して、自分の強みや特長(ポジショニング)をアピールして選んでもらおうとするわけです。
S(セグメンテーション)、T(ターゲティング)、P(ポジショニング)は、まさにマーケティングの考え方になりますよね。
特にポジショニングは、人との違いを明確化する、つまり差別化することが重要なわけで、これもマーケティングの思考と一致します。
ここで、ポジショニングで他者との違いを出来るだけ鮮明にするために、セグメントを狭めることが実際のマーケティングでも行われます。
実際のマーケティングも人材育成で選ばれるための活動も、あくまでアピールするためのセグメントを絞るだけで、人材育成のための活動、つまり自己学習の範囲を絞るわけではありません。
商品やサービス自体を絞るわけではなくて、強みの見せ方を絞るという考え方も、人材育成と実マーケティングで同じ考え方をします。
これが、人材育成にマーケティング思考が必要な2つ目の理由です。
儲ける仕組みはビジネスモデル
最後3つ目の理由になります。
人材育成は、企業側から見ると将来の利益、つまり儲けてもらうことが大きな目的ですが、実は、個人にとっても”儲ける”こと、つまり本人の利益になるという考えがとても大事だと思います。
なぜ育成の機会を活かしたいと考えるのか、あるいはなぜ自己啓発で自分を磨こうとするのかということを突き詰めて考えると、最後は自分の得になるからです。
給与が上がる、人よりも早く昇格する、好きな企業に採用される、独立起業で利益を得る、素敵な配偶者を得る、ということのために直接的、間接的に頑張っているのではないでしょうか?
ただ単に勉強したりして自己啓発するだけでは、欲しいものが手に入らないかもしれません。
なので人は、自分が利益を得られるように、その人なりに工夫をしますよね。
資格を取るということもあるかもしれません。
会社には内緒で副業することで、収益を得る人もいます。
仕事をしっかりとやりながら財テクで頑張る人もいます。
社内の競争で、ライバルの動向を調べてアピールのしかたを変えたりするかもしれません。
例を挙げたら、もっとたくさんあるかもしれませんが、意識するしないに関わらず、自分が利益を得るために、独自の考え方を採用し、独自の行動をする場合があります。
企業活動の、戦略的な行動であったり、ビジネスモデルの構築であったりと同じ考え方です。
自分が利益を得るための仕組みを考えて行動するのですから、これもまさにマーケティング思考ということになります。
マーケティングを学んで、人材育成に活かす
人材育成、そして技術開発のどちらにもマーケティング思考は必要です。
マーケティングは、もはや一部門のみが対応するようなものではなく、全社のあらゆる活動に応用できるのだと思います。
マーケティングを勉強するための2つの機会を提供します。
マーケティング思考力強化セミナー

コトラーのマーケティング理論や最近話題のジョブ理論など、進化するマーケティングを理解することと、マーケティング思考を使った顧客ストーリーの設定、顧客ストーリーから新規事業やイノベーションを起こす方法を学びます。
開催方法 : オンラインにて開催
開催日時 : 随時開催中
内容 :
- マーケティング理論の変遷
- 製品軸から顧客軸へシフトする
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参加費 : 27,000円(税別)
講師 : 賀門宏一
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講師 : 賀門宏一
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