多少の我慢をしても一つの会社に留まるべき?!
今の仕事、会社に100%満足はしていない。チャレンジしてみたい気持ちもあるけど、うまく行くか不安もある。転職に対する周囲のネガティブな見方も気になるし、自分の将来をどう考えるべきか、良い考え方があったら知りたい。
日本人としては珍しく5回の転職をして、60才で技術コンサルタントとして独立・起業をした経験から、人生設計、キャリア設計、あるいは転職を考えたときにやるべきことについてお話しします。
エンジニア転職のメリット・デメリット
結論から言うと、エンジニアにとって転職をすることは、総合的にはメリットの方が大きいと思います。
もちろん、個人ごとの特性や事情などによっても変わりますが、大多数のエンジニアは転職の機会をポジティブに捉えることで、より良い人生を掴むチャンスが広がると思います。
以下、転職を考えること、及び転職そのもののメリットとデメリットを見ていきます。
本当にやりたいことを見つける旅
大学卒業後に会社に入って、たまたま配属された部署で仕事を与えられて、それが今の自分の専門となっているという人って意外に多いですよね。
今の仕事が自分にとって天職で、本当にやりたいことと一致している人は幸せな人だと思います。
もし、今の仕事が本当に自分のやりたいことなのかがはっきりしないとしたら、それは早めに自分のやりたいことに巡り合いたいですよね。
長い人生の、出来るだけたくさんの時間を本当にやりたい仕事で使いたいと思いませんか?
でも、本当にやりたいことが良くわからないという人が、実は大多数なのだと経験から思っています。
エンジニアとしての自分のキャリア、自分の人生を真剣に見つめ直すには、やはりきっかけが必要で、転職を考え始めることは、そのための大きなチャンスだと思います。
転職をすぐに決めてしまうというのではなく、転職についての検討を始めてみることで、自分が本当にやりたいことを見つける旅に出ると思うと、転職を考え始めたことについて大きなメリットがあるのだと言えます。
やりたいことと出来ること、この違いをこれからの人生でどう近づけていくかを考えるきっかけにして欲しいと思います。
また、エンジニアが意外と苦手なのが、損得勘定というやつで、自分がやっていることが将来儲かることなのか、自分にとって得なことなのか、ということも本当はしっかりと考えたいところです。
キャリアを考える上で、ライバルを考えることも大切です。
しかも、このライバルは社内の同期入社の奴ではなく、グローバルに目を向けたときの生涯のライバルというくらいの考えが必要かもしれません。
※注意したいこと
本当に自分がやりたいことを見つける旅をするときに、実際にたくさんの転職をして、その中から選ぶということはしない方が良いと思います。
キャリア設計をしっかりやって、一回の転職を真剣に取り組んでやっていきましょう。
一貫性のない転職、キャリアに対する真剣さがない転職をしていると、後で職務経歴書の話をしますが、職務経歴書の評価が下がってしまい、のちの転職やキャリア形成が不利になっていきます。
本当にやりたいことを、多くのエンジニアに見つけて欲しいし、見つけることは出来ると思います。
ただし、中には見つけきれずにあっちこっちにブレてしまって、迷路に入ってしまう場合もあります。これがデメリットと言えるのかもしれません。
私のセミナー受講者やクライアントのエンジニアの方については個別に相談に乗ったりもしますが、だれか信頼できる相談相手を設定しながら進めるのが望ましいと思います。
転職による収入
1990年~2000年代くらいの転職市場は、景気もさほど悪くなかったし、大企業にいる優秀な人材はあまり動かない時代だったので、それなりのスキルを持っていれば、大幅な収入アップでの転職も多かったと思います。それがメリットと考えていた時代でした。
今でも、スキルによっては大幅な収入アップもあるのだと思いますが、2010年以降、私の居たところから希望をもって転職先に移っていったエンジニアたちは、ほぼ現状並みという条件で移っているようでした。
そういう意味で、今起こっている転職(ある程度ポジティブな転職)の場合、収入よりも仕事のやりがいを重視する傾向があるのかもしれません。
逆にリストラや現状回避のような転職の場合は、収入を犠牲にして転職というのが最近の動向のようです。
日本人は、奥ゆかしいというか、あまり表立って収入や昇格を条件にしたり交渉したりしないのですが、心の中では大きなウェイトを占めていて、同期と差をつけられたりすると、こっそり上司に相談にいったりしますよね。
本来、転職はキャリアアップのきっかけともしたいところで、給与もポジションも上げていきたいし、そのための交渉もして欲しいと個人的には思っています。それが欧米流の転職によりキャリアアップだとここではまず理解をしてください。
ただ、現実には日本の景気も右肩上がりというわけではないので、転職での収入アップは難しいのだと思います。
まずは、やりたい仕事、やりがいのある仕事、将来性のある仕事へシフトすることを優先として、できれば現状維持を交渉材料として考えていただければと思います。
最も大事なのは、将来性ですね。
利益が出続ける会社なのか、利益率は十分か、昇格の余地(大企業のように上が詰まっていないか)などは、しっかり選定の条件にしましょうね。
今は、移籍時の収入を上げるという考えではなく、何年か先を見越しての収入アップを考えるときなのだと思います。
視野を広げて、異なる価値観を知るメリット
5回の転職で気づいたことは、すべての企業はDNAを持っているし、また特有の価値観を持っています。
大学卒業してそれなりの企業で働かせていただいて、社会人としての教育もしていただき、10年も働いていると、そこの会社の常識が自分の常識になっていきます。
仕事のやり方、仕事に対する考え方や価値観、風習とか習慣とか、すべてについてこれが当たり前だと思ってしまうんですよね。
最初の転職が、日本の大手企業から外資系企業だったので、移った時のカルチャーショックはかなり大きかったです。
契約ベースのアメリカ企業と、やりながら考えていく日本企業との間のビジネスでトラブルも多く、外資系10年の経験で、日本流が世界では通用しないことを痛感しました。
また同時に、アメリカ企業側から、複数の日本企業とお付き合いさせていただいて、同業の会社でも考え方や価値観が大きく違うことにも驚かされました。
今、独立して複数のクライアント企業と仕事をさせていただく上で、会社ごとの価値観の違いを理解できていたことは非常に役に立っています。
また、ある企業での常識が、実は外の世界では未知の話で、それ自体が外の世界では特別なノウハウになるようなことが結構あることも、今すごく役に立っています。つまり、これっていわゆる暗黙知というやつで、そういう情報は外の世界で価値が高く、大企業の常識が中小企業では喉から手が出るほどの価値があったりして、私のビジネスでも大企業で得た当たり前の知識が商売道具にもなり得たりします。
ネットワークを広げることも、転職におけるメリットになりえますね。
企業内にいても、グローバルで働くチャンスも多くなっているし、社外とのネットワークを広げて視野を広げることも人によっては可能です。
しかし、会社vs会社の付き合いでは、面識レベルのネットワークで、価値観の違いや暗黙知までを共有するところまでは行きにくいですね。
長い人生で、いずれは自分の技術やノウハウを武器に独立したいという想いがあるとしたら、一企業の価値観しかないと、顧客や関連企業とのコミュニケーションでややハンデを負うことになるかもしれません。
新しい人との出会いも多い方がいいと思います。
社内にいても、転勤や組織変更などで新しい出会いもあると思いますが、価値観の違う人たちとのネットワークは、生涯の財産になると思います。
ただし、例えば大企業と中小企業、日本企業と外資系企業、開発の仕事とコンサルタントなど、領域が変わるとそこにいる人の人種が大きく変わる場合があります。
わりと大人しい人が多い開発組織から、外資系の営業組織などに移ると、俺が俺がという人ばかり、ダメ出しははっきりと言われる、など免疫がなくて精神的にやられてしまう人も結構います。
全く異なる価値観を学ぶ大きなメリットがある反面、拒絶反応が出てしまうリスクもありますね。
将来に向けて人間関係の免疫を作るくらいの気持ちでいられればいいのですが、気の弱い人、人間関係に自信のない人は、転職を決めるときには、面接する上司になるだろう人を良く観察することと、場合によっては率直に面接官に人間関係について質問してみましょう。
自分の力でお金を稼いでいる意識
特に大企業にいると、自分が実際に会社の利益に貢献している意識って生まれないことが多いと思います。
実際に売り上げノルマを持った営業職であれば、具体的な貢献金額を意識しながら働いていますよね。
技術職ではなかなか難しいと思いますが、でもこれってとても大事なことなんです。
外資系企業での実経験ですが、人件費に対するコスト意識は非常に高く、利益を上げる組織でなくても、自分のコストは社内の部署に貢献して、貢献した分を直接交渉してコストを払ってもらって、毎年ブレークイーブンをキープさせられることがあります。(このケース、結構あります)
ブレークイーブンが維持できない組織は、極端な話、アメリカ企業では組織ごとつぶされてしまうんですよ。
大企業でも部門間のコストのやり取りは実際やっているのですが、なかなか末端の担当レベルまで、このような話は伝わってきません。
自分が企業内で存続するためのコストは自分で持ってこいという環境にいると、これは仕事に取り組む姿勢が変わりますよね。
これは将来独立を考える人にとっては、非常に大きなトレーニングになります。
人によってはプレッシャーに押しつぶされてしまう危険もあるので、適正を見る必要はありますね。
実際、転職から一歩進めて、フリーランスエンジニアになる場合は、まさに自分の稼ぎを自分で取ってくるという試練に立ち向かうことになります。
メリット・デメリットのまとめ
自分が本当にやりたいことを見つけて、自分のことは自分でしっかりやりたいと思う人にとっては、転職はメリットが大きいです。
独立心を育て、社内ではない本当のライバルの存在を知って、将来に向けて一歩ずつ行動していくことで、明るい未来を描けると思います。
ただし、出来ればメンターというか、信頼できるそうだん相手がいると、道に迷いそうになった時に助けてもらえますね。
また、自分のことって、自分では意外にわからなかったりします。
客観的な判断をすることも大切なので、他者からのアドバイスを大切にしましょう。
収入面では、大きな期待は出来ないとしても、自分に自信を持って交渉すること、そして会社の将来性を見て将来の収入アップとポジションアップを狙いましょう。
それを出来ることが転職の本来のメリットですから。
反対に、将来のビジョンが弱い状態で、今の状態を変えるための転職の場合は、転職の繰り返しが不利な状況を作ってしまうこと、思った以上の負荷がかかること、人間関係の悩みは形を変えてやってくる(場合によっては悪化する)ことを認識しておいて欲しいと思います。
転職を意識したエンジニアがやるべきこと
エンジニアとして大学卒業から60才定年までで約35年、65才までの雇用延長を考えると40年、今後さらに70才まで定年が伸びると45年、定年の年齢に関わらず、人生100年時代にいつまで働き続けたいか、働き続けるべきかを考えると、結構長いエンジニア人生ですね。
この長いエンジニアとしての人生を、ただ流れに任せて過ごすのではなく、方向性と戦略を持って悔いのない人生にしたいですよね。
転職を考えたらおすすしたいやるべきことについてお話しします。
人生の目的と目標、つまり志を持つ
たまたま入った大学の学部、たまたま入った会社で配属された部署で当てがわれた仕事が、今出来ることになっている。
私自身もそんな形でハードウェアエンジニアとしての人生を歩み始めました。
それはそれとして、自分が本当にやりたいことを見つけてみませんか?
今自分が出来ることと、本当はやりたかったことって、同じであれば幸せなことですが、もしかすると少しずれているのかもしれませんよ。
そのためには、自分を棚卸ししてみることが有効なのですが、棚卸しをして最初にやりたいのは、人生の目的と目標を再認識することです。
言葉の定義として、ここでは、
目的 : 一生かけてやり続けるあなたのミッションであり、こころざし。
目標 : 目的に向かって、ある期間で達成したい具体的な結果(数値化すべきもの)
とします。
ちなみに、私の目的と目標を共有させていただくと、
目的:
技術者育成に貢献することを通して、日本の製造業が再び世界で脚光を浴びるような世界を作ること
目標(2020年11月現在):
2023年12月までに、技術者異業種コミュニティを作って100人以上の企業幹部候補者、または起業家を生み出すこと
なのです。
私がこの目的を設定したのは、約12年前のことになります。
外資系企業で、外国人に自分の技術やノウハウを教えている自分にあるときハッとして、自分はもっと日本企業に貢献したいと思うようになり、それから日本企業に戻って、それでも紆余曲折あって3年前に技術コンサルタントとして起業しました。
転職をするにしても別の道を考えるにしても、現状を変えたいと思ったら、棚卸しをして人生の目的と目標を再設定(初めての人は設定)しましょう。
職務経歴書(レジメ)を書いてみる
転職をすると決めたなら、職務経歴書は絶対に必要なものですが、転職を決意する前にも職務経歴書を書いてみることを、エンジニアの方たちに勧めています。
サラリーマン時代に私は、英語と日本語のレジメをいつも更新して用意していました。
冒頭に申し上げたように、私は5回転職をしているのでレジメは結構たくさんのことを書かなければなりません。
しかも後で振り返ってみると、自分が経験していたことをはっきりと確認することができます。
職務経歴書(レジメ)は、その人の人生を鏡で映すようなものだと思います。
あるヘッドハンターが言ってたのですが、10年以上の経歴がある人のレジメを見れば、その人の限界はわかるとのことです。
もちろん努力次第でヘッドハンターの予測を裏切ることもあるのでしょうが、レジメを見ていると、その先の流れが大雑把にわかるということです。
自分でレジメを書いてみて、この先の経歴にどんなことを書き入れることが出来るかを考えてみると、それがキャリア設計につながるわけですね。
職務経歴書は書き方は直せますが、経歴の内容は変えることが出来ません。
この人がどんな人生を描いてここまで来たのか、これからどこへ行こうとしているのか、その流れがきれいに見えると、その人への信頼感が増します。
逆に、仕事の内容の振れが大きかったり、つながりが薄かったり、そのことに対する本人の考え方が明確でなかったりすると、信頼が持てなくなります。
職務経歴書(レジメ)って、転職やキャリア形成にとって、とても大事なものなのです。
もちろん、折角やってきたことを上手にアピールすることも大切なのですが、レジメから見える本人のキャリアに対する考え方、流れ(ストーリー)の方がもっと大事かもしれません。
レジメを美しく維持することを将来のために考えてください。
技術以外のことも学び続ける
エンジニアとして他人よりも優れたものを持つのは大事なことです。
技術を磨くのは当然の仕事なのですが、キャリアアップを本気で目指すならば、技術以外のことも勉強してください。
様々な知恵をつけて、将来の独自なノウハウを形成するためには、読書をし続けて、情報のインプットを止めないことが大切です。
特に起業や将来、経営層への昇格を目指すのであれば、「経営学」の勉強を必須だと思います。
経営学以外で(経営学とも関連がありますが)私が勧めるのは、以下の3つについての学びです。
マーケティング思考
技術開発は何のためにするかといえば、企業が利益を得るためであり、そのためには顧客から喜ばれる製品や技術を開発しなければなりません。顧客価値を高めて、顧客に認知されて初めて企業の目的が達成できることに貢献できるエンジニアが求められています。
ロジカルシンキング
ものごとの本質を捉える力は、組織の生産性を大幅に向上させます。分析力、問題解決力、コミュニケーション力、さらに組織内議論を進めるファシリテーション力を兼ね備えたエンジニアは、どこへ行っても通用します。
参考:論理思考力強化セミナー
戦略思考
企業は、これまでもこれからも激しい競争に勝っていかなければなりません。競争という意識が組織の隅々まで浸透しないと企業の力は弱まると思います。戦略思考を持ったエンジニアが、組織リーダーとして求められています。
転職を知るにはその世界を見に行こう
転職をすべきかどうか決める前に、色々とやるべきことをお話ししてきました。
一番は、自分が本当にやりたいことを見つけるために、自分を棚卸しして人生の目的を設定するところなんですが、自分の人生をしっかりと設計しながら、同時に転職という世界を覗きに行ってもらいたいと思います。
先走って転職先を決めることではなく、正しい情報を見極めて、正しい判断をして欲しいと思っています。
また、適切なアドバイスを得ることもとても大事で、メンターを見つけられたら一番いいのですが、身近にアドバイザーが見つからないようであれば、転職エージェントとのコンタクトから、信頼できるアドバイザーを探すという手もあります。
先方も商売ではありますが、こういうマッチングサービスは、紹介するエージェントもクライアントに対する信頼が第一ですから、わりと親身になって相談に乗ってくれることが多いはずです。
まずは行動です。転職サイトなども覗いてみましょう。
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