ジョブ理論との出会い

一生勉強

ジョブ理論は、クリステンセンの本が日本では有名ですが、実は、海外ではクリステンセン以外の本もいくつか出版されています。Jobs to be doneという言い方が海外では主流のようです。

 

ジョブ理論との出会いは、2016年の秋ころ、師匠の稲垣さんから紹介されたときのことです。

”ジョブ理論”という言葉は、2017年の夏にクレイトン・クリステンセンの「ジョブ理論」という本が出版されて認知されるようになったのですが、もともとは Jobs to be dobe (JTBD)法とか、ジョブズ法などと言われていました。

ジョブ理論のルーツは、Anthony Ulwickのアウトカム・ドリブン・イノベーション(ODI)だと言われています。

Ulwickは、2002年ころハーバード・ビジネス・レビューでアクトカム・ドリブン・イノベーションのコンセプトを発表し、2005年に”What Customers Wnat”を出版して、アウトカム・ドリブン・イノベーショによって製品開発をブレークスルーさせる手法を紹介します。

そして2016年に”Jobs to be done”を出版し、ジョブ理論につながっていきます。

最初に紹介されたジョブ理論は、このUlwickの手法についてでした。

ジョブ理論の基本になる”ジョブ”とは、顧客が片づけなければならない仕事(Job)です。

製品のニーズということから、製品ということから離れて、そもそも顧客は何をやりたいのか、あるいはやらなければならないのか、ということを顧客の立場にたって”ジョブ”とは何かを考えていきます。

製品開発者にとって、製品から離れるのがどれくらい難しいかは、このジョブ理論を実践してみるとすぐにわかります。

”ジョブ”の捉え方は、簡単なようで慣れないとホワっとしていてわかりづらいかもしれません。この辺は、私のセミナーなどをぜひ聞いてください。

Ulwickの Jobs to be done 手法は、顧客のジョブを出発点にはしますが、むしろジョブの結果をどう評価するかというアウトカムをメインに扱っていきます。アウトカム・ドリブン・イノベーションという言い方がはまりますね。

簡単にこの手法の概要についてお話します。

ジョブは、顧客が行いたいこと、なので例えば、

「外出先で音楽を聴く。」

これがジョブで、このジョブをする結果を評価すること、つまりアウトカムは、

「好きな曲を好きなタイミングで聞きたい。」

「できるだけ簡単な操作で音楽を聴きたい。」

「持ち運ぶ機器はできるだけ軽くしたい。」

などのようになります。

あるシチュエーションでのジョブは複数あります。そして、それぞれのジョブに対して、複数のアウトカムがありえることになります。

そして、それぞれのアウトカムに対して、現状、顧客が

  • その重要性をどう捉えているか
  • 今、どのくらい満足しているか

を調査します。アンケートやインタビューなどでの調査がメインになると思います。

そして、アウトカムごとに重要度と充足度のグラフに調査結果をプロットすると、下図のようになります。

 

グラフ上の各点が、アウトカム一つ一つの調査結果になり、グラフの真ん中、白い地の中にあるものは、適切充足と言われ、重要度と充足度がバランスしていることを示します。

グラフの左上の部分は、重要度が低いのに満足度が高いことを表していて、製品として考えるとオーバースペックということになります。

大事なのは、グラフの右下の部分で、これらは重要度が高いのに充足度が低いことを表しています。

アウトカム・ドリブン・イノベーションは、この右下にくるものを探すことがメインの目的で、この過小充足のアウトカムを徹底的に改善していくことで、ヒット商品を生み出そうというのが、とても大ざっぱではありますが、この手法のフレームワークになります。

製品の機能という視点ではなく、顧客の目線でそもそも何をやらなければならなくて、その仕事をどう評価するかという観点で仮説を立てて検証していくアプローチなので、うまく使えばイノベーションを加速することにつながると思います。

 


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一方、日本でジョブ理論ということが広がってきたキカッケを作ったのは、ハーバード・ビジネススクールのクレイトン・クリステンセン教授の”ジョブ理論”という本ですが、もともと1990年代後半ころに、クリステンセンはUlwickからアウトカム・ドリブン・イノベーションのコンセプトを伝えられていて、彼なりにその考えを発展させていって、彼独自の考え方を伝えていくことになったのです。

クリステンセンは、日本でも”イノベーションのジレンマ”の著者として有名ですが、イノベーションのジレンマの次に出版した”イノベーションの解”という本の中で、ファーストフードの店でミルクシェークの販促をした話から、「顧客は製品を見て製品を買うのではなく、やらねばならない仕事を片付けるために製品を雇用(hireと言った)する。」ということを強調しました。

このミルクシェークの話は、クリステンセンは、あちこちの講演でも話していてYoutubeなどでもたくさん紹介されています。

簡単に種明かしをすると、ミルクシェークのプロモーションを考えて、顧客を分類し、味や見た目の嗜好を研究したり、試行錯誤するといった従来のマーケティング手法を展開したが、まったく売り上げは改善しなかった。そこで、18時間、店の状況を観察して、さらに翌日には仮説に基づいたインタビューをして、朝の時間、車で通勤するビジネスマン(アメリカでの話)が、1~2時間の退屈な運転時間をうまくこなすために、ミルクシェークを買っている顧客が多いことを突き止めます。つまり、味や見た目ではなく、適度に長持ち(ドロっとしているため)、適度な腹持ちという条件を満たしたことで、採用されているということでした。

ジョブ理論の一つの教訓は、ミルクシェークの競合は、他社のミルクシェークではなく、この場合(通勤ビジネスマンにとって)は、ドーナツ、バナナ、コーヒーという通勤時間の退屈さをしのぐための別のモノということです。

ジョブ理論を、色々なクライアントさんと一緒に実践してきて、一番感じるのは、適切な競合を見分けられる手法だということです。

ただ、クリステンセンのジョブ理論は、明確なフレームワークがあるわけではないので、言ってることはわかるけれど実践の方法がわからないという感想を持つ方がとても多いです。このあたり、文書での説明は難しいので、直接お問い合わせください。

クリステンセンの”ジョブ理論”は、アメリカでの原タイトルは、”Competing against Luck”というものです。つまり、これまでの多くのイノベーションは、幸運の賜物だったというのが、出発点です。

技術的に変革を起こしたもの(多くの場合プロダクト・アウトと言われる)がヒットしたケースは、たくさんあるけれど、マーケットが受け入れるかは別の理論があるはずだということがベースになっています。

クリステンセンは、ジョブを Progress という言葉で言い換えようとしています。つまり”進化”ということでしょうか?

単なる仕事という意味ではなく、「もっと情緒的なもの、ステータスの高い人に見られたい。」「お良い父親と思われたい。」のような人としての進化です。

この辺りは、フィリップコトラーのマーケティング3.0とか4.0で言われているマズローの欲求5段階説の中で、現代のマーケティングは自己実現に注力すべきと言っているのと似ています。

 

ジョブ理論は、マーケティングの根本的、かつ本質的な考え方を言っているような気がします。そう考えると、現代のマーケティングを大きな目で捉えられるかもしれません。

 

 

余談ですが、マーケティングをいろいろと勉強していると、クリステンセン、コトラー、日本で言うと、森岡毅さんや三宅秀道さんも、アプローチは若干違うものの、言ってることの本質は同じだというのが、私の感想です。もっと言うと、ジョブ理論とデザイン思考も、本質的なところはかなり似ていると思っています。(この辺は話が完全に逸れましたが、興味のある方は弊社までアクセスください。)

Progress、人それぞれの進化への欲求、もう一つ気になるジョブ理論があります。

Alan Klement という人が書いた”When Coffee and Kale compete”という本です。


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この本は、日本語版は出版されていませんが、アマゾンでも買えるし、原本のPDF版がWeb上で無償ダウンロードできます。

この本は、特にアメリカでは、ジョブ理論がスタートアップの方たちが活用して成功している事例をたくさん紹介しています。(中にはクリステンセンを批判しているところもありましたが)

この本の中で、Alanはジョブを”New Me”、新しい私と表現しています。クリステンセンのProgressやコトラーの自己実現主義と同様ですね。

ジョブ理論は、とても奥深い考え方で、私は日本の技術者にもしっかりと考え方を身に付けていただき、マーケットにより確実に受け入れられるイノベーションをたくさん起こしてもらいたいと願っています。

ご意見、ご批判など、お待ちします。

 

 

 

 

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