自分の暗黙知を見つけて商売道具にする

起業ノウハウ

自分では常識だと思っていたようなことが、実はあるところではとても役に立つという発見があれば、それがあなたの暗黙知だ。

今、多くの企業で困っていることの一つが、ベテラン社員がノウハウを持ったまま、そのノウハウを会社に残さずに辞めてしまうことです。

 

コミュニケーションの断絶のようなことも原因の一つかもしれないのですが、もっと根本的な原因は、何が特別なノウハウなのか、ベテラン本人も会社もわかっていないからなのだと思います。

つまり、これがベテランの暗黙知というやつで、暗黙知というのは、それが特別な知識だと本人が気づいていない知識とか知恵ということになります。

そんなこと滅多にないんじゃない?!と思う人もいるかもしれませんが、実はこの暗黙知はそこら中にあるし、これは実はビジネスチャンスだと思うのです。

わかりやすい例で説明すると、大企業は、働く環境とか社員教育が、中小企業などと比較すると、割としっかりと整っています。

大企業で長年勤めていると、こういう大企業で働く間に得た知識を世の中の常識だと考えてしまうのですが、実は大企業から中小企業に行ったり、あるいは別の企業に転職したりすると、自分の知識が、世の中の常識ではなく、その元いた会社の常識でしかなかったことに気づくことがあります。

私は、サラリーマン時代に5回の転職をしましたが、会社が変わるたびに、会社特有の常識ということに戸惑ったことを思いだします。

すごく極端な事例ですが、大企業では新入社員研修で、スケジュールの立て方とか、品質管理の基本などで「次工程をお客様と考える」とか、バラツキということが本質管理の基本だとか、PDCAって何かとか、企業人としての常識に近いことを教わりますよね。

でも、中小企業だったり、新卒採用をあまりせずに即戦力採用を中心にする会社だと、そういう基本的な教育が行わないことがあります。

そうすると、例えば、スケジュールの立て方とか管理の仕方などを知らない人がたくさんいる会社って、実際に存在することになるのです。しかも少数ではない気がします。

”改善”するっていうことをQCサークルとして教わった私たちは、チームメンバーで問題の根本原因をがんばって見つけて、そこに手を打つことで様々なことを改善していくことを知っていますが、会社の中の中間層の人たちがそんなの当たり前だと思ってしまっていると、若い人たちには伝えられずに、また新たな教育も行われずに、結果、社内の多くの人が、まったくそのような思考を持っていなかったりすることがあります。

そうやって伝統は途切れていくのかもしれません。

大企業ではやっている会社が多いと思いますが、人事考課の仕組みとは別に、個人ごとのキャリアプラン、育成計画を本人と上司で話し合うための人事システムがあり、3年後や5年後に自分がどうなっていたいか、そのためにどんな教育を受けたいか、今の組織以外への異動希望があるかなどをフォーマットに書いて、上司と面談して会社からの支援を受けようとする仕組みです。

ただ、こういう仕組みも中小企業では経験がない会社も多く、仕組みによるメリットも理解されていないし、どうやって実現するかもわからなかったりします。

例えば、経営コンサルタントとか、人事コンサルタントという立場で、育成計画プログラムのメリットや制度設計などを提案するだけでも、企業経営者から感謝されたりすることもあるわけです。

 

EMS企業で開発部門にいたときに、様々な企業向けの電子機器製品の製品開発を請け負っていたことがあります。

DC電源という、AC入力から機器内部用のDC電源を作り出すユニットでは、AC入力が大きく変動して内部に危険が及ばないような保護回路を持っているのですが、世界で100V系や200V系の入力電圧がある中で、安全回路として420Vの保護用電子部品を挿入することが世の中で常識になっているとします。

ある企業S社の開発を受託したときに、常識に沿って420Vの保護回路を入れていたら、S社の品質管理部門の人が怒鳴り込んできて、なぜ600Vの保護部品を使わないのだ、こんなことは常識だろうと言ってきます。

よくよく聞いてみると、600Vの保護回路を使うのはS社の決まりごとだそうなのですが、それは、S社は中国の安定しない電力供給事情の中で、過去に事故が起きたことがあって、その教訓からS社内では保護回路を世の中の常識である420Vから600Vに変更することで、安全性を高めるようにしたということが判明します。

聞いてみれば、確かに600Vの方が安全だし、その方がいいことはわかるのですが、それはS社独自のノウハウであって、世の中の常識ではまだ420Vで良いという状態であったわけです。

S社の品質管理部門の人は、S社のノウハウを世の中でも当たり前のことと勘違いしていたことになりますね。

これも小さな例ですが、このようなことは世の中にあふれています。

自分の知識を世の中の常識と思いこんでしまうという、非常にもったいないことが蔓延っています。

技術開発部門のベテランは、長い間、技術開発の最前線にいて、日々問題と格闘しながら問題を解決する過程で、ノウハウ、知識や知恵を蓄積していきます。

それらが体に染みついていって、いつの間にか本人にとっての当たり前なことになっていきます。

若い技術者の図面や報告書をじっくり読む機会があれば、そのギャップに気づくこともあるかもしれませんが、忙しくて若い人の細かなことまでは見切れません。

あまりにもたくさんのことがベテランの中の常識に埋もれていって、会社にノウハウが残らなくなるわけです。

ある会社で、会社のノウハウをA3報告書に残そうという試みをしていて、A3報告書のレビュー会をしているとき、私が若い報告者にきびしい質問をして、若い報告者がきちんと質問に答えられないでいると、ベテラン社員が助け船を出します。それは、こうこうこういうわけで。。。という説明がされ、周りで聞いていた人たちも、へえ、そういうことだったのだ、と感心して聞いています。

そうなのです、それがノウハウですよね。今しゃべったことを若い人に伝える、あるいは報告書に残しておかないと会社に残っていきませんよ、と指摘します。

言うは易しで、実際にはどこからどこまでが本人のノウハウで、どこが会社のノウハウかが、もうわからなくなっています。

少なくとも、ベテラン本人の体に染みついた多くのノウハウは、何らかの形で再利用可能なわけで、これを私はビジネスチャンスと考えています。

ベテラン技術者の隠れたノウハウは、特殊な技術分野だけで有効ではないはずなのですが、本人は自分がやってきた製品や技術分野にしか通用しないと思いこんでしまいます。

でも、一つの製品でも、何年も何度も問題解決や新しい技術開発を経験して得たノウハウは、まったく違う製品でも絶対に活用できます。

このことは私自身が身をもって経験していますが、私は転職もそうですが、EMS企業で開発をやっていたので、OA機器、テレビ、車載用機器、通信機器、半導体素子などの開発経験を持っています。比較的経験は多い方です。しかし、それ以外の製品やシステムは経験がありません。

コンサル業をやってきて、金属加工、医療機器、計測器、白門家電などの経験はありませんでしたが、まったく問題なく、それらの開発に関してアドバイスや問題点の指摘などをやっているし、そのことで少なからずクライアント企業に貢献できていると思っています。

ひとつの世界で極めることが出来れば、どこの世界でも通用するということです。

このベテランの暗黙知を商売道具にできるかどうかを見抜くのは、自分一人では難しいかもしれませんが、少なくとも、自分の棚卸しをしてみることが重要です。

自分の棚卸しをどうやってやるか、自分の可能性を考えてみたい方は、下記のページをご参照ください。

 

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